思い立ったが吉日

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今週、元『WIRED』編集長の若林恵さんのトークイベントに行ってきた。

『WIRED』も好きだったし、そこで若林さんが書いていたこともよかったけど、何より編集長を辞めるにあたってのインタビューがとても面白かったので、一度直接話を聞いてみたいなと思っていた。

最初は、意外にぶっきらぼうなんだなという印象だったけど、それは知的な部分や内面の誠実さみたいなものを、直接表に出さないための照れ隠しのように思えた(もちろん口が悪い気質のようなものはあるにしても)。でも、話し始めるとそんな印象はすぐに忘れて、久しぶりに知的好奇心がくすぐられるような刺激があって、のめり込んで聞いていた。

仕事の癖なのか、話を聞きながら忘れないようにメモを取るのだけど、すぐに「この人の言葉はできるだけ忠実に残そう」と思った。インタビューで質問にまとまった答えを返せない人とか、まどろっこしい話し方をする人の場合は、聞きながら要点をまとめつつメモをすることもあるけど、若林さんの場合は、言葉の使い方も含めてそのまま残したいと思った。

言葉の使い方には、自分の癖がとても強く出るし、よく使う単語も偏ってくるから、たまにこういう刺激を入れて活性化したいと思うのだけど、「この刺激を受けたい」と思う人がなかなか現れないというのが本音でもある。(すごく偉そうだけど好みという意味でも)だから、久しぶりにそういう言葉を話す人に会って、一言一句間違えないようにメモをしながら、昔村上春樹の文章を模写していた時のことを思い出したりしていた。

人の言葉をそのまま自分の中に入れて、それをそのまま書き出すと、自分がいかにその人と違う言葉や言い回しを使っているかよくわかる。これはもちろん勉強にもなるし、私にはいい刺激になる。そして刺激を受けると、また自分でも書きたくなる。

そういう意味では、最近私がブログを書いていなかったのは、時間的な問題というより、いい刺激を受けていなかっただけなのかもしれない。

今回の若林さんのトークイベントは、先日発売された著書『さよなら未来』の出版キャンペーンの一環だった。トークイベントの後で早速注文して、今読んでいるところ。内容にも言葉遣いにも文章にも、刺激を受けまくっている。だから書きたくなって、思い立ったが吉日で久しぶりにブログを書いてみた。

本の感想は、また読み終わった時にでも書こうと思う。私も、翻訳というかたちではあるけど、本を出させてもらって、改めて本みたいに贅沢なエンタメはないなと思った。『グルジ』なんて820ページ以上あるから、1日で読み終える人はいないと思う。ということは、何十時間も、何日もかけて、おそらくは読んでくれているのだろう。そんなに時間コストのかかるエンタメは他にない。しかも、自主的に本を開き、能動的にページをめくらなければならないという、おそろしく面倒なエンタメでもある。でも、本当にいい本に出合えた時は、かかった時間と労力が逆に喜びや面白さを増幅してくれる。そして、間違いなくとても個人的な体験として心に残る。だから本が好きなのかもしれない。

Yuko MatonoBook, Blog